サステナビリティ
気候変動への対応
当社グループは、気候変動への取り組みを重要課題の一つと位置付け、サステナビリティ推進委員会を中心に気候変動に関するリスクと機会の特定、当社に与える影響、および具体的な対応策等の検討を進めています。また、必要なデータの収集と分析を進めており、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)(*1)が提言する情報開示フレームワーク(気候変動のリスク・機会に関するガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に沿った開示を推進していきます。
TCFD提言に基づく情報開示を行う上で、以下のシナリオを主に参照しています。
- 移行リスク・機会「1.5℃シナリオ」:IEA(*2) WEO2020 NZE
- 物理的リスク・機会「4℃シナリオ」:IPCC(*3) AR5
- *1.TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures;当社グループは、2023年6月9日にTCFD提言への賛同を表明しております。
- *2.IEA:国際エネルギー機関(International Energy Agency)
- *3.IPCC:気候関連に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)

TCFD提言による開示推奨項目
TCFDの提言に基づき、4つのテーマに関する気候変動関連情報を開示します。
ガバナンス
気候変動リスクおよび機会に関する組織のガバナンス
戦略
組織の事業・戦略・財務計画に対する気候関連リスクおよび機会に関する実際の影響および潜在的影響
リスク管理
気候変動関連リスクを識別・評価・管理するために用いるプロセス
指標と目標
気候変動関連リスクおよび機会を評価・管理するのに使用する指標と目標
1.ガバナンス
当社グループは、気候変動に係る対応を経営上の重要課題と認識し、サステナビリティ推進委員会を中心とするガバナンス体制を構築するとともに、取締役会による監督を行っています。
気候変動に係る所管部署
経営戦略本部は、サステナビリティ推進委員会の事務局を担当するとともに、関連部署との連携や全社的な気候変動に係る対応の推進を担い、気候変動に係る事項を含むサステナビリティ戦略を検討し、サステナビリティ推進委員会に提言します。
2. 戦略
当社グループは、気候変動関連を含むサステナビリティに係る対応を経営上の重要課題と認識しています。特に、生命に係る医薬品の流通を担う立場として、自然災害の激甚化に伴うサプライチェーンの寸断や医薬品供給能力の低下は大きな事業リスクであり、社会リスクでもあります。また、事業の特性上、直接排出されるScope1とScope2の排出量は少なく、サプライチェーンから排出されるScope3の排出量が多いことが特徴となっています。このような認識に基づき、気候変動に伴う当社グループの事業への影響を把握し、対応策を策定するため、シナリオ分析を実施しました。
医薬品卸売事業を対象組織として、IPCC第5次評価報告書やIEA WEO2020 NZE等のシナリオを参照の上、気候変動が2030年時点で1.5℃上昇する世界におけるシナリオ(移行シナリオ)と、2050年時点で4℃上昇する世界におけるシナリオ(物理シナリオ)を想定しています。
当社が考える1.5℃と4℃の世界観
1.5℃シナリオ(移行シナリオ)における世界観
世界観
環境規制や技術革新により低炭素化が進み、温室効果ガス(GHG : Green House Gas)が抑制されている。
環境規制を受けるため、非化石エネルギーの使用増加への対応が必要。
政策・法規
厳しい法規制改正
化石由来エネルギーの使用
最小限使用
非化石エネルギーの使用
積極的導入
規制・制度
- 炭素税が導入され、炭素排出量(CO2排出量)に対する税負担が上昇
- 再生可能エネルギー(以下、「再エネ」)利用推進による電力価格上昇
- 省エネ補助金(各種支援政策)が充実
- 2050年カーボンニュートラルに向けて、 急速な排出削減が求められる
市場
- ガソリン需要の低下に伴い、ナフサ価格が上昇
- 再エネ利用促進等により、化石由来エネルギー使用量が減少
- EV導入等低炭素な配送手段の導入が加速
- 炭素税や再生可能エネルギー調達コストの上乗せによる商品コスト上昇
- 電源構成の変化や炭素価格の影響等により電力の単価が上昇
- 炭素価格の影響や化石由来エネルギーの価格の高騰等により運送コストが上昇
技術
- 脱炭素技術の登場
- 非化石素材の台頭
評判
- 災害対応において地域コミュニティとの連携が重要になる
- ESG投資の定着
- ステークホルダーからのGHG削減要請の増加
4℃シナリオ(物理シナリオ)における世界観
世界観
気温上昇を抑えるための新たな政策・規制は実施・推進されず、温室効果ガス(GHG)の排出量が多い。
そのため自然災害が増加し、防災機能強化のための設備投資費用などの対応が必要。
政策・法規
現行法規制のまま
化石由来エネルギーの使用
現行のまま
非化石エネルギーの使用
現行のまま
急性
- 気象災害の激甚化(大雨・台風・高潮・洪水・山火事)
- 気温上昇に伴う空調負荷(電力使用量)が増加
- 電力構成変化を起因とした電力価格の上昇
- 再エネの普及が進まず、ガソリン価格が上昇
- 風水害により、交通網が分断
慢性
- 平均気温の上昇
- 平均海水面の上昇
- 渇水による水資源の不足
- 気象条件の変化による自然由来素材の不足
- 環境変化による感染症の増加
- 医療用医薬品など温度管理商品の取り扱いの難易度の上昇
リスクと機会の特定
上記シナリオを参照の上、気候変動の影響が及ぶ事象について、影響度が高いと考えるリスクと機会を特定し、事業および財務への影響を定量・定性の両面から評価したものを以下の表にまとめています。サステナビリティ推進委員会では財務影響を含む定量的な評価を行いながら、当社グループの戦略のレジリエンスと移行計画の策定の必要性等を検討していきます。
リスク
| 区分 | 分類 | 内容 | 財務への影響度(*1) | 影響度の算出方法 | 時間軸 (*2) |
|
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2030年 影響度 |
2050年 影響度 |
|||||
| 移行面 (1.5℃ シナリオ) |
炭素税 | 炭素税の導入により、店舗・営業拠点・物流センター等での活動や 輸送等に係るコストが増加 (仕入れ先の仕入れコストは薬価制度と関連するため、 当コストに係る炭素税の影響は考慮していません。) |
中 (約6億円) |
大 (約11億円) |
2023年度の温室効果ガス排出量とIEAの排出係数をもとに算出 | 中長期 |
| エネルギー | エネルギー価格の高騰により、店舗・営業拠点・物流センター等での 医薬品の保管や輸送などの事業運営コストが増加 |
大 (約13億円) |
大 (約11億円) |
2023年度のエネルギー使用量とIEAの排出係数をもとに算出 | 中長期 | |
| 仕入先での調達コスト増加分が仕入価格に転嫁することにより、 仕入コストが増加 |
大※ | 大※ | ー | 中長期 | ||
| 技術 | 脱炭素関連の政策・法規制強化および省エネルギー対応や 脱炭素化設備の導入により、設備投資コストが増加 |
大 | 大 | 省エネルギー対応に向けた 投資金額から算出 |
中長期 | |
| 評判 | 気候変動対策への遅れによるステークホルダーからの評価の低下 および株価、業績への影響 |
大※ | 大※ | ー | 中長期 | |
| 物理面 (4℃ シナリオ) |
急性 | 風水害の増加・激甚化により、店舗・営業拠点・物流センター等 での操業停止に伴うコストの増加 |
大 | 大 | 事業所の操業停止および 全在庫の損失を想定 |
短中期 |
| 感染症流行(パンデミック)により、従業員不足(従業員の出社困難) および患者さまの受診抑制がおこり、業績が悪化 |
小※ | 小※ | - | 中長期 | ||
| 仕入先の操業停止による医薬品等の調達不能に伴う 安定供給への影響 |
大 | 大 | 主要取引メーカーが被災し、 復旧までに時間を要することを想定 |
中長期 | ||
| 慢性 | 気温上昇により、医薬品品質管理コストが増加 | 大 (約16億円) |
大 (約15億円) |
2023年度のエネルギー使用量と IEAパラメーターをもとに算出 |
中長期 | |
| 気温上昇により、事業所等の職場環境整備および事業運営コストが増加 | 大 | 大 | 2023年度のエネルギー使用量と IEAパラメーターをもとに算出 |
中長期 | ||
| 取引先の操業停止や製造量の減少により、業績が悪化 | 大 | 大 | 主要取引メーカーが被災し、 復旧までに時間を要することを想定 |
中長期 | ||
機会
| 内容 | 財務への影響度(*1) | 時間軸 (*2) |
|
|---|---|---|---|
| 2030年 影響度 |
2050年 影響度 |
||
| 気候変動への対策によりステークホルダーからの評価が高まり、 株価上昇および業績向上 |
中※ | 中※ | 短中期 |
| 感染症流行(パンデミック)により関連医薬品の需要が高まり、 業績が向上 |
中※ | 中※ | 中長期 |
| 気候変動により、新たな医療提供体制の需要が高まることで、 関連製品・サービスの需要が増加 |
小※ | 小※ | 短中期 |
| 気候変動により、新たな医療提供体制の需要が高まることで、 新たなビジネス機会が創出 |
中※ | 中※ | 短中長期 |
- *1.影響度の評価基準については、営業利益に与える影響を基準とし、以下の通り設定しております。
大:10億円以上、中:5億円~10億円未満、小:5億円未満
定量的な評価が困難な項目につきましては、定性的(※)に評価しております。 - *2.時間軸は、短期(~2025年まで)、中期(~2030年まで)、長期(~2050年まで)に設定しております。
3.リスク管理
気候変動に係るリスクについては、サステナビリティ推進委員会にて、リスクと機会の識別、評価、対応検討と目標の設定、対応策の推進を行い、定期的に取締役会に報告します。
気候変動に係るリスクを識別・評価・管理するプロセス
気候変動に係るリスクを識別・評価・管理するプロセスは、以下のように行われます。
-
リスクの識別
気候変動関連の戦略に基づき、気候変動に係るリスクを特定します。気候変動が事業に与える影響や、気候変動によって引き起こされる可能性のある災害や社会問題などのリスクを識別します。識別された気候変動に係るリスクについては、リスク管理委員会や共創未来グループ災害等対策委員会と情報共有します。
-
リスクの評価
特定されたリスクの潜在的な影響を評価し、重要度に応じて対応策を検討します。具体的には、リスクの発生確率や受ける影響の規模に応じてリスクを回避するための対応策を検討するとともに、対応策を実施した際の効果や費用を検証します。
-
気候変動関連の対応策を立案
気候変動関連の対応策を立案します。
-
目標の設定
リスクの評価に基づき、気候変動リスクに対応するための目標を設定します。
-
報告・監視
気候変動に関する目標の達成度合いについても定期的に取締役会に報告します。取締役会はリスクに対する対応策や設定した目標を監視し、進捗状況をモニタリングします。
-
リスクの見直し
設定した目標の進捗状況や取り組み状況に応じて、気候変動に係るリスク管理計画や緊急時に対応すべきリスク、設定した目標などを継続的に見直し、改善を図ります。
4.指標と目標
当社グループは、温室効果ガス(Scope1・2・3)の排出量を指標とし、温室効果ガスの排出量の大きい領域や削減対象を把握し、環境負荷の低減に努めています。社会的環境の変化を踏まえ、自社の直接的な排出を対象とするScope1.2については、以下の通り短中長期的な削減目標を定めています。また、カーボンネガティブの実現に向けて、Scope3に対する取り組みも重要であると認識し、具体的な削減目標の策定に向けて検討を進めています。今後も仕入先や顧客との協働を進め、温室効果ガスの排出量削減に向けた取り組みを進めていきます。
温室効果ガス排出量の削減目標および実績(Scope1・2)
| 指標 | 目標 | 2019年度 (基準) |
2024年度 (実績) |
|---|---|---|---|
| 温室効果ガス排出量 (Scope1・2) |
|
40,886t-CO2e | 22,538t-CO2e (44.9%削減) |
Scope1.2.3における排出量の実績(*1、2)
| 項目 | 2019年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 |
|---|---|---|---|---|
| Scope1排出量 | 17,391 |
15,105 |
13,915 |
13,420 |
| Scope2排出量(ロケーション基準) | 15,042 |
15,947 |
16,001 |
15,589 |
| Scope2排出量(マーケット基準) | 23,495 |
14,943 |
14,825 |
9,118 |
| Scope1・2排出量(*3、4) | 40,886 |
30,048 |
28,740 |
22,538 |
| Scope3排出量(*5) | 2,312,318 |
2,360,680 |
2,105,528 |
1,991,676 |
| カテゴリ01_購入した製品・サービス | 2,263,257 |
2,344,474 |
2,086,402 |
1,964,191 |
| カテゴリ02_資本財 | 40,283 |
7,494 |
10,803 |
16,041 |
| カテゴリ03_燃料及びエネルギー関連活動(Scope1,2を除く) | 4,762 |
4,716 |
4,538 |
4,486 |
| カテゴリ04_輸送、配送 | 438 |
640 |
354 |
432 |
| カテゴリ05_事業から出る廃棄物 | 3 |
20 |
18 |
20 |
| カテゴリ06_出張 | 623 |
316 |
495 |
498 |
| カテゴリ07_従業員の通勤 | 2,952 |
2,912 |
2,771 |
5,830 |
| カテゴリ13_リース資産(下流) | - |
109 |
146 |
177 |

- *1.対象範囲は、東邦ホールディングス㈱、東邦薬品㈱、㈱セイエル、九州東邦㈱、㈱幸燿、㈱東邦システムサービスとしています。
- *2.2024年度のScope3算定においては、カテゴリ02『資本財』、カテゴリ07『従業員の通勤』、カテゴリ13『下流のリース資産』において、排出原単位が昨年度と比べて上昇していることから、数値も増加していますが、実態としては大きな活動量の変化はありません。
- *3.Scope2の排出量データはマーケット基準で算出しています。
- *4.当事業年度の温室効果ガス排出量の算定に際し、一部の新電力会社については、2025年6月16日現在で2024年度の排出係数が公表されていなかったため、前事業年度(2023年度)の排出係数を利用していましたが、7月4日に当該新電力会社から2024年度の排出係数が公表されたことに伴い、温室効果ガス排出量を再計算しています。
今後の取り組み
当社グループは、政府が掲げる目標「カーボンニュートラル」の実現に向けて、高効率設備への改修による「省エネ」、太陽光発電設備の導入による「創エネ」、再生可能エネルギーの調達による「再エネ」などを計画的に実施してまいります。当事業年度における取り組みは以下の通りです。
- 配送回数の適正化をはじめとする配送効率の向上
- 太陽光パネルの設置
- EV車およびEV充電スポットの導入
- 物流センターにおいて、再生可能エネルギー電力プランへの切替を実施





